日本がん看護学会誌
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研究報告
終末期がん患者の予後予測項目に対する訪問看護師と病院看護師の評価
熊谷 有記前川 厚子阿部 まゆみ国府 浩子田渕 康子
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2011 年 25 巻 2 号 p. 35-42

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抄録

要 旨

本研究の目的は,終末期がん(肺・胃・直腸結腸)患者の予後予測項目に対する訪問看護師と病院看護師間の評価の相違を明らかにすることである.

独自に作成した予後予測項目を用いて,がん看護領域における臨床経験5年以上の看護師に質問紙調査を行った.協力が得られた訪問看護師27名,病院看護師17名を分析対象とした.

訪問看護師と病院看護師が適切と評価した予後10日の項目例は,肺がんで安静時の呼吸困難,胃がんで腹水貯留,直腸結腸がんで尿量減少/無尿であった.予後3日の項目例は傾眠と尿量減少/無尿で,肺,胃,直腸結腸がんすべてに共通した.両者が適切性を認めなかった予後10日と予後3日の項目例は褥瘡であり,肺,胃,直腸結腸がんすべてに共通していた.訪問看護師だけが適切と評価した予後10日の項目例は,肺がんで発語減少,胃がんでベッドから起き上がれない,直腸結腸がんで嚥下困難,予後3日の項目例は,肺がんで昏睡,胃がんで脈の緊張,直腸結腸がんで不整脈の出現であった.

訪問看護師と病院看護師の双方が適切と評価した項目は,がんの浸潤や身体機能低下等から生じる症状であり妥当性があると考える.両看護師間で異なる評価が出現したのは,療養の場で用いる機器や薬剤の違いが考えられる.シームレスケアを提供するためにも,両看護師がとらえる予後予測項目の相違に考慮して,情報を共有する必要がある.

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2011 一般社団法人 日本がん看護学会
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