日本がん看護学会誌
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原著
喉頭全摘術を受ける頭頸部がん患者の術前から退院後1年間の他者とのコミュニケーションを通したコミュニケーション方法の再構築過程
山内 栄子秋元 典子
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2012 年 26 巻 1 号 p. 12-21

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抄録

要 旨

本研究の目的は,喉頭摘出者の術前から退院後1年間の他者とのコミュニケーションを通したコミュニケーション方法の再構築過程を明らかにし,その過程を支援する看護実践への示唆を得ることである.対象は喉頭全摘術を受ける頭頸部がん患者12名で,術前から退院後1年間にわたって参加観察および半構成的面接を行い修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて分析した.

その結果,喉頭摘出者の他者とのコミュニケーションを通したコミュニケーション方法の再構築過程は,『伝わらないことによって膨張化した欲求不満状態からの脱却化』を図る過程であった.この過程は,失声の予告が引き起こした〈声を失うことのイメージ化〉および【命と声の引き換え】の覚悟を持ち【喉頭発声機能喪失下での伝達の再適正化・再円滑化・効率化】を目指すことから始まり,術後の【相手を見て・合わせて・ひたすら伝える】ことを起点に生じた3つのサイクル,すなわちさらなる【喉頭発声機能喪失下での伝達の再適正化・再円滑化・効率化】を図るサイクル,【伝わらない伝えられない・話せない話さないことへの欲求不満の膨張化】を引き起こすサイクル,〈人とのコミュニケーションを楽しむ〉および【極限までに縮小化されたコミュニケーションからのわずかな拡充化】を図るサイクル,および【伝わらない伝えられない・話せない話さないことへの欲求不満の膨張化】を起点に【命と声の引き換え】の覚悟を想起するサイクル,の計4つのサイクルが相互に連動して循環するなかで患者は〈欲を出す〉ようになり,その欲を原動力としてさらなる【極限までに縮小化されたコミュニケーションからのわずかな拡充化】を図り,それがまた4つのサイクルを動かしていくという循環型の過程であった.患者自身が自然に〈欲を出す〉まで待ち続けその時の到来を見逃さないこと,〈欲を出す〉までに患者および周囲の人が体験する苦悩を緩和すること,という看護実践の必要性が示唆された.

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2012 一般社団法人 日本がん看護学会
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