日本がん看護学会誌
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研究報告
初めて化学療法を受ける就労がん患者の役割遂行上の困難と対処
田中 登美田中 京子
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2012 年 26 巻 2 号 p. 62-75

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抄録

要 旨

本研究の目的は,初めて化学療法を受ける就労がん患者が抱える役割遂行上の困難と対処を明らかにすることである.初めて化学療法を受ける14名の就労がん患者を対象に,半構成質問紙を用いた面接を,初回治療開始時,初回治療開始後1・2・3カ月の時期に行った.分析は,困難と対処の部分を抽出し意味内容の類似性からカテゴリー化した.

初回治療時の困難は,〈体力的に役割をこなしていけるのか心配〉〈病気や治療が役割に及ぼす影響がわからない〉などの7カテゴリーだった.新たに抽出された困難は,1カ月後は〈役割を継続したくてもできない〉〈他者との関係に悩む〉などの6カテゴリー,2カ月後は〈役割と治療の両立が難しい〉などの3カテゴリー,3カ月後は〈他者との関係がつらい〉だった.治療開始時の対処は,{深く考えない}{他者を活用する}などの11カテゴリー,新たに抽出された対処は,1カ月後は{気持ちの支えをもって治療に取り組む}などの5カテゴリー,2カ月後は{できる範囲で役割を担う}などの3カテゴリー,3カ月後は{意思をアサーティブに伝える}などの2カテゴリーだった.

初めて化学療法を受ける就労がん患者は,体力的な不安を抱えながら他者との関係に悩み,病気や治療の影響がわからないという不確かさの中で,体調をコントロールし周囲のサポートを活用しながら気持ちの上でも前向きに努力していることがわかった.患者が社会的役割と病者役割を両立させながら主体的に治療に取り組むためには,先の見通しをもちながら副作用のセルフケアが行えるようにし,周囲の人とアサーティブに関われるよう支援することが必要である.

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2012 一般社団法人 日本がん看護学会
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