要 旨
本研究の目的は,外来で分子標的治療を受けるがん患者の症状体験とQOLとの関連を明らかにすることである.上皮成長因子受容体(EGFR)阻害薬による分子標的治療を受けているがん患者29名(平均年齢63.9歳)を対象とし,自記式質問紙調査法と診療録からのデータ収集による調査を行った.質問紙は,個人属性,症状体験(がん患者用の症状評価尺度MDASI‒Jと皮膚症状の強さ),QOL(QOL‒ACD)で構成した.
分析の結果,症状体験の下位尺度である「症状の強さ」は,QOL‒ACDの下位尺度である活動性(rs=-.75;p<.01),身体状況(rs=-.58;p<.01),精神・心理状態(rs=-.44;p<.05),社会性(rs=-.47;p<.05)と,「症状による生活への支障」は,活動性(rs=-.78;p<.01),身体状況(rs=-.56;p<.01),精神・心理状態(rs=-.64;p<.01), 社会性(rs=-.55;p<.01)の4下位尺度および全般的QOL(rs=-.43;p<.05)と,「皮膚症状の強さ」は,活動性(rs=-.54;p<.05),身体状況(rs=-.60;p<.01)と有意な負の相関がみられた.外来で分子標的治療を受けるがん患者のQOL向上のためには継続した症状マネジメントの重要性が示唆された.