日本がん看護学会誌
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原著
初回治療段階にある中年期の悪性神経膠腫患者の体験のゆらぎ
梅田 尚子岩田 浩子
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2015 年 29 巻 3 号 p. 29-39

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抄録

要 旨 本研究の目的は,初回治療段階にある中年期の悪性神経膠腫患者の体験のゆらぎの様相を明らかにすることである.悪性神経膠腫で初回治療中である40 ~50 歳代の患者5 名を対象に半構成的面接を行い,修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチに基づき分析を行った.その結果,対象者は【脳腫瘍は驚怖】と感じながらも,【治療に賭ける】強い決意を持ち治療に臨んでいたが,終ついには【脳腫瘍による崩壊】という生きること自体の危機を体験していた.さらに,家族や周囲の人々との相互作用による【存在価値の迷い】は,いく度も繰り返す【変化した外見への動揺】と【同病者との相互作用の光と影】の《同病者との同一視による辛さ》の影響を受けゆさぶられ,アイデンティティはゆらぎ,不確かなものになっていた.一方,【同病者との相互作用の光と影】の《同病者は一筋の光で救い》により勇気づけられ,価値の転換といえる【今後の生き方を模索する】自分を認識していた.この体験は,脳腫瘍による生きること自体の危機という,非常に強大でゆらぎがないネガティブな体験が根底に存在するからこそ,アイデンティティの均衡を保持するようにゆらぐことで,いっそう複雑で混沌とした様相を呈していたと考えられる.中年期のアイデンティティの危機にゆらぎながらも懸命に自分らしく生きることを模索する患者と家族をともに支え,思いに沿った看護支援の必要性が示唆された.

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