日本がん看護学会誌
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原著
経口抗がん薬治療を受ける 再発・転移性乳がん患者の服薬に関する経験
矢ヶ崎 香
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2016 年 30 巻 2 号 p. 81-89

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抄録

要 旨

目的:再発・転移性乳がん患者がどのように病状や治療を認識し,日常生活の中で服

薬を意味づけ,判断し,行動しているのかなど,服薬に関する経験を明らかにする.

方法:再発・転移性乳がん患者を対象とし,半構造化面接による質的記述的研究を

行った.

結果:研究参加者4 名の服薬に関する経験は,【死の脅威と自分らしい生活とのバラ

ンスの揺らぎ(A 氏)】【普通の生活の価値と治療の辞め時との葛藤(B 氏)】【腑に落ちない服薬の意義を巡る葛藤(C 氏)】【生き延びるために自分を鼓舞して続ける服薬(D 氏)】が導かれた.死の脅威や病状の不安が高まると,経口抗がん薬を“救世主”“生き延びるため”などと意味づけて,確実に服薬していた.一方,死の脅威が和らぎ,あるいは治療による身体の害の懸念,薬を避けたい感情が高まると,自分の生活に関心が向き,故意に薬をスキップ,飲み忘れることを繰り返していた.

結論:再発・転移性乳がんの服薬に関する経験は,治療への感謝や期待などの肯定的

な感情や認識と治療による身体の害や効果の疑念などの否定的な感情や認識との狭間で葛藤し,生活や価値観などを含めて自問を繰り返し,治療を意味づけることによって,故意にスキップする,うっかり飲み忘れる,あるいは確実に服薬などが導かれていた.看護師は患者の奥にある服薬の意味の理解に努め,抑制している感情をも含めた支援の必要性が示唆された.

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2016 一般社団法人 日本がん看護学会
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