日本がん看護学会誌
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原著
初めてがんと診断され手術を受けたがんサバイバーのゆらぎ
島田 美鈴藤田 佐和
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2016 年 30 巻 3 号 p. 9-18

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抄録

要 旨

研究目的は,初めてがんと診断され手術を受けたがんサバイバーのゆらぎを明らかにすることである.初めてがんと診断され,胃を切除したサバイバー20 名を対象に,半構成的面接法にて,がん診断以降の気持ちや体験について調査した.分析は修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて,以下のような結果を得た.

がんサバイバーのゆらぎは【がん罹患と治療で心が打ち拉がれる】という強く激しい揺れの状態から始まるが,その状態に留まるのではなく【がん治癒や回復を目指して最良を尽くす】力,【がん罹患を受け止める心の準備をする】力,【がん治癒への希望を見出す】力を順次動員させ揺れを収束しようとする.しかし,ゆらぎが生じる前の過去の記憶により【がん罹患前の自己への羨望】を生じさせる.〈健康であった過去の自己を羨む〉は,強く激しい揺れに逆戻りする危うさがある反面,〈手術前を目指した回復への願い〉は,揺れを収めようとする力の動員を促進させる.このようにゆらぎは,後戻りや新たなゆらぎが生じるなどスパイラル的な変化の過程である.また,ゆらぎは【命の存在する価値ある時間の意識化】を生じさせ,今を生きることを鮮明にさせ【がん罹患と治療で心が打ち拉がれる】の後に順次動員させる【がん治癒や回復を目指して最良を尽くす】【がん罹患を受け止める心の準備をする】【がん治癒への希望を見出す】【がん罹患前の自己への羨望】を鮮明に浮かび上がらせる.

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2016 一般社団法人 日本がん看護学会
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