日本がん看護学会誌
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原著
術後膵臓がん患者が苦悩をかかえながら生きるプロセス
安田 弘子二渡 玉江堀越 政孝
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2021 年 35 巻 論文ID: 35_102_yasuda

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抄録

本研究の目的は,術後膵臓がん患者が苦悩をかかえながら生きるプロセスを明らかにすることである.17名の患者に半構成面接を行い,得られたデータを修正版グラウンデッド・セオリー・アプロ―チに基づき分析した.

その結果,対象者は膵臓がん告知後に,〈もう人生終わりなのか,手遅れなのか〉と動揺したが,『手術に命を懸けるしかない』と手術を受けた.術後『これからも生きられる』と実感した一方で,手術と術後補助化学療法によって〈からだも辛いし,見た目もいやだ〉と苦しんだ.〈よくなるために,自分ができることをとにかく試し〉たが効果が得られず,〈このまま死んでしまうのか〉と死に脅えた.この時,感情が生と死の狭間で行き来し,〈生きられるのか,それともやっぱり死んでしまうのか〉と悩み苦しんだ.このプロセスが【生と死の不確実性に翻弄される】を示す.時間の経過とともに〈食べられるようになってきた〉実感をすると〈死にたくない,まだやりたいことがある〉と,『自分の力で苦しみから逃れる方法を探し』た.〈普通に生活できている〉ことと,『生きることを支えてくれる人が身近にいる』ことを実感し,〈大丈夫,まだ生きられそうだ〉と感じた.このように【自己コントロール感覚を取り戻す】ことで〈生と死が不確実な時間を精一杯生きる〉と決意していた.

看護支援では,身体的精神的苦痛を緩和し,“食べられるようになってきた”実感を促進することが重要である.

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2021 一般社団法人 日本がん看護学会
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