2021 年 35 巻 論文ID: 35_20_kawamura
目的:本研究の目的は,在宅療養中の高齢がん患者のがん疼痛の体験と方略を明らかにすることである.
方法:症状マネジメントモデル(Dodd, 2001)を概念枠組みとし,がん疼痛のある高齢がん患者を対象に,半構造的面接によりデータを収集し内容分析の手法を用い分析した.
結果:対象は高齢がん患者9名であった. がん疼痛の体験には,【がんがある限り痛みとは縁が切れない】【常に痛みを意識し 暮らしの自立が妨げられる】【日々,暮らす中で,痛みの緩急のパターンが分かる】【失敗する体験から「無理できない範囲」を体得する】【指導されたとおりに鎮痛薬を使えていない】【暮らすうちに徐々に 鎮痛薬の効果を体得する】の 6 カテゴリが抽出された.また,方略には,【体の感覚を頼りに痛みによいと思う方法 を探り,試し続ける】【自分でできないと思ったことは,助けを求める】 【これまでのとらえ方ややり方を変え, 楽しみを見つけて過ごす】【体の感覚を指標に 養生し,痛くならないよう備える】【医師に痛みが伝わるよう努める】【自分が感じたままに痛みを医師に伝えられない】【医師に任せる】の 7 カテゴリが抽出された.
考察:うまくいかなかった体験から無理できない範囲を体得し,よいと思う方法を試し続けるという方略は,在宅療養の場において,高齢がん患者が自立した生活を維持するために編み出した積極的方略ととらえ,支援することが必要である.