犯罪社会学研究
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脳科学・神経科学と少年非行
友田 明美
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2017 年 42 巻 p. 11-18

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抄録

 近年の脳科学研究の進展により,ヒトの脳の成熟のプロセスが緩徐に進行することがわかってきた. 例えば,前頭前皮質の成熟は20代後半まで進行する.一方で,感情と報酬感を制御している大脳辺縁 系の発達は,まだ前頭前皮質が未熟な10歳頃に始まる思春期にホルモン量が増えて成熟が促される. ヒトの脳は胎児期,乳幼児期,思春期に爆発的に成長するが,その時期は脆弱な時期でもある.とく に10代の若者では感情を司る大脳辺縁系と衝動的行動を抑制する前頭前皮質の成熟がミスマッチして いるからだ.すなわち,この不均衡のために前頭前皮質が未熟な10代の少年たちは危険な行動に走り がちだが,一方で環境が適切に整えられれば,それに素早く適応することも十分に可能な「脳の可塑 性(脳領域間のネットワークを変更することによって環境に応じて変化できる)」も考慮できる.現代 では,思春期の開始年齢は世界的に早まる傾向にあることが知られており,世界的に長くなってきて いる不均衡期間にある少年の脳を理解することは脳の可塑性の視点からも重要で,今後の脳科学研究 の大きな課題でもある.

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© 2017 日本犯罪社会学会
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