犯罪社会学研究
Online ISSN : 2424-1695
Print ISSN : 0386-460X
ISSN-L : 0386-460X
『犯罪多発地区』の多様な相
Felson and Eckert の“Overt Crime Areas”論を鍵として
原田 豊
著者情報
ジャーナル フリー

2020 年 45 巻 p. 46-56

詳細
抄録

 日本犯罪社会学会第46回大会シンポジウム『コミュニティと犯罪』での報告ならびにその後の討論を踏まえ,これをFelson and Eckert (2018: 242) の “Overt Crime Areas”論の観点から再整理することにより,米国における「コミュニティと犯罪」研究の今日的な意義について検討した.Overt CrimeAreas論は,顕在的犯罪と潜伏的犯罪,犯罪と無秩序とを峻別し,顕在的犯罪と無秩序に支配された無法な近隣地区の状態を,犯罪の「原因」ではなく「促進要因」だと捉える点に特色があると考えられる.この観点は,地域社会と犯罪との関連に関する新たな研究知見や,1970年代半ば以降の米国社会の変容をよく反映したものと見られるが,それだけいっそう,近年のわが国の犯罪問題に関する参照枠組みとして適切であるか否かについては,慎重な検討が必要だと考えられる.

著者関連情報
© 2020 日本犯罪社会学会
前の記事 次の記事
feedback
Top