2023 年 48 巻 p. 58-73
COVID-19の規制により人の外出が抑制されたことで,路上犯罪,空き巣,乗り物盗などの犯罪が減少すると予想された.しかし,平常とは異なる状況に便乗した詐欺などの犯罪が増加することも考えられる.COVID-19の規制が犯罪の発生に与えた影響を明らかにすることは,パンデミック時の犯罪対策を考える上で重要であろう.本研究では,ARIMA モデルを活用して,パンデミック初年(2020年)の東京都における刑法犯の種類別の認知件数がどのような影響を受けたかを検討した.ほとんどの種類の犯罪で2020年の認知件数が減少していたか,あるいは減少も増加もしていなかった.ただし,詐欺については増加していた.本研究から,今回のパンデミックは多くの種類の犯罪の発生を抑制するかあるいはそれほど大きな影響を与えなかったが,詐欺については増加させていたことが示された.