日本障害者歯科学会雑誌
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原著
Down症候群由来歯肉線維芽細胞にみられるIL-4の炎症抑制反応阻害と転写因子の関係性
根岸 浩二田中 陽子
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2021 年 42 巻 1 号 p. 33-42

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抄録

Down症候群(DS)の歯周病は早期発症で急速に進行しやすいことが知られ,その原因に免疫応答異常が挙げられる.免疫応答の中心であるT細胞の分化を担うInterleukin(IL)-4には抗炎症作用があり,炎症の収束で重要な働きをする.現在までに,DSの歯周病に関して炎症抑制因子に着目した報告はない.そこで,われわれはDSにみられる炎症応答へのIL-4の関与を検証した.

健常者由来歯肉線維芽細胞(NGF)とDown症候群由来歯肉線維芽細胞(DGF)にリコンビナントタンパクrIL-1βおよびrIL-4を添加し,細胞応答を確認した.ELISA法にてタンパク産生量を測定し,real-time PCR法によって遺伝子発現量を確認した.内部標準としてglyceraldehyde-3-phosphate dehydrogenaseを用いた.さらに,Western blotting法にて,転写因子であるnuclear factor (NF)-κB p65,signal transducer and activator of transcription (STAT)6および3のリン酸化を確認した.内部標準としてβ-actinを用いた.

NGFではrIL-1β/IL-4群でrIL-1β群よりIL-6とIL-8の発現は減少したがDGFでは増大した.転写因子のリン酸化反応はNF-κB p65とSTAT6ではDGFのほうが低く,STAT3ではDGFのほうが高かった.以上のことからDGFではIL-1βで発現誘導されたIL-6およびIL-8に対するIL-4による抑制効果は認められず,NGFとは異なるSTAT6およびSTAT3のリン酸化反応が関与していることが考えられた.

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