日本障害者歯科学会雑誌
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症例報告
全身麻酔時の採血によりバセドウ病の診断にいたったDown症候群患者の一例
成清 綾道満 朝美十川 栄理子楠元 順哉赤松 明香藤﨑 史帆笹山 澪西村 ななみ安井 仁司秋山 茂久
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2021 年 42 巻 1 号 p. 53-59

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抄録

Down症候群では,しばしば甲状腺機能異常が認められることが報告されている.今回,全身麻酔下での歯科治療時に甲状腺機能のスクリーニングを行うことによりバセドウ病の加療にいたった症例を経験したので報告する.

患者は24歳のDown症候群女性,主訴はむし歯の治療をしてほしいであった.心室中隔欠損症および右室二腔症の修復術後であったが,その他全身的に特記事項は認めなかった.数年前より苛立ちや拒否が強くなり,当センター紹介となった.初診時,患者は歯科治療ユニットに座れず,付添者用の椅子に座らせ診察した.多数歯う蝕を認め,全身麻酔下での歯科治療を計画した.術前検査への拒否も強く,内科主治医への病状照会で得た検査データに問題がなかったため,全身麻酔下に検査(採血,胸部エックス線写真撮影,心電図検査)を施行した.全身麻酔は問題なく行えた.検査結果で甲状腺機能異常を認めたため,内科主治医に精査を依頼した結果,バセドウ病と診断され,ただちに投薬治療が開始された.未治療のバセドウ病は全身麻酔を契機に甲状腺クリーゼを発症する可能性が非常に高く,全身麻酔下での歯科治療は病状が安定するまで延期とした.投薬治療の結果,甲状腺機能が正常化し,治療への協力性もみられつつある.本症例より,特に全身疾患の既往のないDown症候群の患者であっても,合併する可能性の高い疾患については精査を行い,早期に発見することが重要と考えられた.

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© 2021 一般社団法人 日本障害者歯科学会
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