日本障害者歯科学会雑誌
Online ISSN : 2188-9708
Print ISSN : 0913-1663
ISSN-L : 0913-1663
臨床集計
小児在宅歯科医療に関する全国実態調査
髙井 理人田村 文誉菊谷 武小方 清和大島 昇平八若 保孝
著者情報
ジャーナル フリー

2021 年 42 巻 1 号 p. 91-98

詳細
抄録

日常的に医療を必要とする「医療的ケア児」の増加に伴い,在宅医療のニーズは高まっているが,小児在宅歯科医療はまだ普及していない.小児在宅歯科医療の全国的な実態と課題を明らかにするため,小児在宅歯科医療研究会に所属する歯科医師206名に対してアンケート調査を行った.

対象者のうち130名から回答を得た.小児訪問歯科診療を実施する歯科医師は51名であった.患児の年齢は0~4歳が46.5%で最も多く,重症度分類では超重症児が39.1%で最も多かった.依頼ルートは「患者家族」が54.9%で最も多く,他職種からの依頼は11.8~27.5%であった.課題と感じる項目は「他職種との連携」(70.6%)が最も多かった.小児訪問歯科診療の実施を検討している歯科医師42名の回答のうち,実施にいたっていない理由は「依頼がない」(85.7%)が最も多かった.患者家族や他職種に対して小児訪問歯科診療の存在や役割を周知することや,円滑な連携を行うための地域医療システムを構築することが必要と考えられた.小児訪問歯科診療を行う予定はないが障害児の外来診療を実施している歯科医師26名のうち,小児訪問歯科診療と連携している割合は30.8%であった.一方で,連携していない歯科医師のうち72.2%が今後連携することが可能と回答しており,後方支援病院として機能する医療機関が数多く存在する可能性が示唆された.今後,小児在宅歯科医療の推進に向けた具体的な方略を検討するためのさらなる調査・研究が必要と考えられる.

著者関連情報
© 2021 一般社団法人 日本障害者歯科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top