2012 年 52 巻 6 号 p. 222-230
2011年東北地方太平洋沖地震によって, 震度6強の福島県白河市および震度6弱の栃木県那珂川町で降下火砕物の崩壊性地すべりが4か所で発生した. これらの地すべり発生の大きな要因は, 降下火砕物が斜面に平行な成層構造を持ち, また, すべり面が形成される軟弱な古土壌の層が内在し, それが斜面下部で浸食などによって切断されて下方からの支持力を失っていたことにある. これらの崩壊性地すべりの見かけの摩擦角は, 10°から16°であり, 土砂の高い運動性を示している. 斜面に生えていた樹木の多くは, 移動・堆積の後も根系に拘束された平板土壌に支えられて崩積土の上に立っており, 土砂の上に立った状態で移動したことがわかる. 上記のものと類似した崩壊性地すべりは, 従来数多くの地震によって発生しており, このことは降下火砕物の中には地震動に対して非常に不安定なものがあること, そして, 地震による斜面災害を軽減するためには, それらを特定していくことが必要であることを示している.