応用地質
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トンネル掘削振動を利用した前方探査手法の研究開発
西 琢郎若林 成樹
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2016 年 56 巻 6 号 p. 343-349

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抄録

トンネル切羽前方の地山状況を事前に把握することは,突発事象への対処を減らし,工事を安全に進めるだけでなく,より急速施工を実現してコスト低減にも寄与するものと考えられる.ここで述べる前方探査手法は,いわゆる反射法弾性波探査を応用したものであり,油圧ブレーカーが切羽面でこそく作業を行う際の打撃振動測定から切羽前方の地質境界や断層等の位置を推定するものである.振動を受振するセンサーは,坑壁ロックボルトの頭部に簡便に脱着できる設置具を介して固定し,坑内での機器設置~撤収までの時間は30分以内で,通常の施工サイクルをほとんど阻害することがない.データ解析は,事務所内のパソコンでフィルタ処理・地山弾性波速度推定・反射波の抽出を行い,複数のセンサーで受振した反射波の等走時楕円体が重なる共通点を見出すことから反射面位置を推定する.この作業を掘削進行に併せて繰り返し行うことにより,同じ地点に反射面が現れることを確認して探査精度を向上させていく.複数のトンネルにおいて現場適用実験を行った結果,本手法の有効性が確認できた.

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© 2016 一般社団法人 日本応用地質学会
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