応用地質
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論説
ジルコンのU-Pb年代測定法の応用地質学的利用について
伊藤 久敏長谷川 修一
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2017 年 57 巻 6 号 p. 257-265

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抄録

U-Pb年代測定法は,地質学の分野では,地球最古の岩石・鉱物の年代測定に用いられるなど,数億~数十億年前といった古い時代の試料を対象とした年代測定法として広く知られていた.しかし,最近では,比較的容易に入手可能な機器を用い,第四紀試料に対しても高精度に年代測定が可能となっており,応用地質学的な適用が可能になってきたと考えられる.

ここでは,U-Pb年代測定法の原理,ジルコンを用いたU-Pb年代測定手順・実験方法を概説するとともに,U-Pb年代値の解釈における留意点等を提示する.また,U-Pb年代測定法の適用例(第四紀テフラの年代測定,地熱資源の評価等)について紹介するとともに,新たな適用例として,第四紀に発生したと考えられている地すべり(松島巨大地すべり)への適用結果を報告する.結果として,想定された地すべり面とその上下から得られた凝灰岩および凝灰質砂岩の3箇所からいずれも約15Maの年代が得られたことから,年代学的には地すべり説を実証する直接的なデータは得られなかったが,この例のようにジルコンのU-Pb年代測定法は,応用地質学的に重要な地質現象(地すべり,活断層など)の理解に適用可能であり,今後の幅広い適用が期待される.

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© 2017 一般社団法人 日本応用地質学会
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