応用地質
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論文
四国の高速道路切土法面における酸性土の分布と成因
伊藤 博信 長谷川 修一山中 稔西山 賢一石田 啓祐
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2022 年 63 巻 3 号 p. 96-111

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抄録

四国では高速道路の建設にともない,多くの切土法面で酸性土による植生不良等の維持管理上の問題が生じている.しかし,四国ではこれまで酸性土の障害はあまり認識されていなかったために,酸性土の分布範囲の詳細な検討や発生のメカニズムを究明した研究がほとんどないのが現状である.

本研究では,四国の高速道路建設時における切土法面の酸性土の発生が,中央構造線に集中していることをpH試験から明らかにした.中央構造線沿いの高速道路切土法面での酸性土は熱水変質作用によるキュービック型黄鉄鉱の生成に起因することや,また,高速道路建設により酸性土が顕在化したのは,長大法面工事によって,未風化岩盤に含まれていた黄鉄鉱が地表面付近に露出され,酸化により硫酸が発生したためと推定できた.そして中央構造線に沿って多くの酸性土が発生するのは,中央構造線断層帯や不整合面が中新世火成岩の貫入に伴う熱水の通り道となったためと結論づけた.

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© 2022 一般社団法人 日本応用地質学会
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