応用地質
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断層の影響はどこまで及んでいるか
金折 裕司
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2001 年 41 巻 6 号 p. 323-332

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抄録

断層には規模の大小にかかわらず必ず破砕帯が伴われている. 破砕帯の存在は基礎岩盤の安定性に深くかかわってくるため, 大ダムや大規模地下発電所, 原子力発電所など大規模構造物の立地選定や耐震設計を行ううえで, その性状や分布が明らかにされてきた最近になって, 断層破砕帯を構成する物質には, 断層岩という新しいカテゴリーが与えられ, その知見は飛躍的に増加した. 実際の断層調査にあたっては, 断層岩は露頭での肉眼鑑定や光学顕微鏡による観察で容易に分類できるため, 単なる破砕帯という記述だけではなく, 断層岩の種類を明記しておく必要がある. 一方, 断層周辺の母岩内には断層運動の影響を受けたゾーンの存在が知られており, それらはプロセスゾーンと呼ばれている. プロセスゾーンはその外側の母岩に比べ, 節理や小断層, 微小割れ目が数多く発達していることで特徴づけられる. しかしながら, それらの変形構造が断層運動に直接かかわって形成されたものであるのかを判断することは, 困難な場合が多い. プロセスゾーンの存在は, 長期間の地下水流動や物質拡散に影響を与えることが予測されるため, 高レベル放射性廃棄物の地層処分を検討するうえで, その性質を十分に把握しておかなければならない.

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© 日本応用地質学会
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