応用地質
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携帯型電導度計とGPSを利用した湿原環境調査
河内 邦夫高橋 宣之矢部 和夫浦野 慎一
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キーワード: 湿原, 環境汚染, 電気伝導度, GPS
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2001 年 41 巻 6 号 p. 371-382

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抄録

著者らが作った深さ別の見掛け電導度が測れる新しい携帯型電導度計とGPS測位を使って湿原の環境調査を風蓮湿原で行った. 測定位置の確認は, 海上保安庁が運用しているDGPS局を利用するDGPS測位を用いた. 汎用のDGPS機器類, モバイルパソコン, 12Vバッテリ, アンテナ類などを小さくまとめ, アルミ製の背負子を背負って湿原内を歩き回って調査した. 湿原内は林内の一部を除いて視界が開け, 測位精度は電導度測定中はすべて2.5mRMS以下を確保できたと推察された. 今回のシステムによって, 2日間で東西2km×南北0.7kmの範囲の調査が2人でできた. 求めた電導度分布から放牧場, 国道, 風蓮川に近い地区の電導度は, 湿原内部より高く, とくにそれらの縁は最も高かった. 空中写真と簡単な現場踏査によって求めた植生との比較を行ったところ, 湿原内の林のほとんどはこの電導度の高いところにあり, 放牧場と国道に近いところに集中していた. 電導度が高いハンノキ林の湿原への侵入により自然植生している貴重なチャミズゴケ群落が退化していく兆候が見られ今後の注意が必要であることがわかった. 本調査法は, 湿原の保全に対する方策を見出す調査法として有効な方法の一つになると考えられる.

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© 日本応用地質学会
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