応用地質
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観測地震動に基づく福井平野の地下構造の推定
小嶋 啓介山中 浩明
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2003 年 44 巻 2 号 p. 94-103

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抄録

地域の地震被害予測に際し, 対象領域のS波速度, Q値, 層厚および密度などの構造を的確に評価することは最重要項目の一つである. 本研究では, はじめに福井大学の鉛直アレイ, ならびに福井平野の東西軸に沿って展開した地震計によって観測された強震記録の周波数特性ならびにH/Vスペクトル特性を提示し, その地盤条件との関連を検討した. ついで, 観測地震動と対応する重複反射法による計算値を周波数領域で比較し, 両者の誤差自乗和を最小化することにより, 観測点直下の層厚およびQ値を推定する逆解析手法を定式化した. 本手法を, 福井地域で得られた多数の地震観測記録に適用し, 福井平野の東西方向断面の地下構造を推定するとともに, 弾性波探査結果などと比較・検討した. 推定された地盤構造によって, 観測地震動が精度良く再現しうること, 推定された福井平野の地盤構造は, 既存の資料と矛盾が少ないことなどを確認した. 提案する地盤構造推定手法を, 強震動観測点に順次適用するとともに, 既存資料および微動観測などを補間情報として活用することにより, 地域の3次元的な地盤構造を, 比較的高精度で推定できる可能性があり, 地震被害予測の精度の向上が期待できるものと考えられる.

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© 日本応用地質学会
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