応用地質
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MT法におけるファーリモートリファレンス処理の効果と紀伊半島南部地域の深部比抵抗構造
上原 大二郎石丸 恒存棚瀬 充史小川 康雄鍵山 恒臣
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2003 年 44 巻 3 号 p. 164-174

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抄録

地質環境の長期安定性にかかわる研究の一環で, 紀伊半島南部地域の高温泉の起源と湧出機構の解明を目的として, MT法電磁探査を行い, 広域的な深部比抵抗構造を把握するとともに, 調査地域のノイズ環境やファーリモートリファレンスの効果の評価を行った. その結果, 直流電化されたJR紀勢本線に起因すると思われる低周波広域ノイズの影響が調査地域に広く認められ, このようなノイズが懸念される地域においてはファーリモートリファレンス方式によるノイズ除去が必要であること, 地磁気活動が活発な状況でのデータを取得するために一測点あたり数日以上の測定が必要であることがわかった. 得られたMT法データから求めた紀伊半島南部地域の深度30kmまでの比抵抗構造 (東西, 南北の比抵抗断面) からは, 本宮町周辺の高温泉は比抵抗不連続部の浅部延長上に位置することが明らかになった. このことは低比抵抗の四万十累層群と高比抵抗の新第三紀酸性岩類の境界部には高透水率・高熱伝導率の裂罅が発達し, それがマントル~下部地殻起源の深部流体 (水) の湧出経路となっている可能性を示唆する.

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© 日本応用地質学会
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