応用地質
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黄鉄鉱起因酸性水の抑制のための方解石含有岩石の利用に関する実験的研究
五十嵐 敏文丸山 悠朝倉 國臣服部 修一
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キーワード: 黄鉄鉱, 方解石, 溶出水, 中和
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2003 年 44 巻 4 号 p. 234-242

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抄録

黄鉄鉱の酸化に起因する酸性水に対して, 方解石含有岩石の中和作用を活用して酸性化を抑制する可能性を検討するために, 黄鉄鉱を含む岩石粉砕試料と方解石を含む岩石粉砕試料とを混合したバッチ溶出試験を実施した. その結果, 混合試料に対しては, 方解石含有試料の混合率の増加とともに溶出水pHが上昇した. さらに, 混合試料の場合でも, 単一試料と同様に, 固相中の炭酸態炭素含有量と硫化物態イオウ含有量とのモル比によって溶出水pHが規定されることがわかった. しかし, 溶出水中のCa濃度やSO4濃度が増加し石膏の溶解度に接近すると, 急激にpHが低下した. このことは, 石膏の生成によって方解石の溶解による中和が制限され, pH緩衝作用を発揮できなくなることを意味する. これらのことから, 黄鉄鉱の酸化に起因する酸性水は方解石含有岩石によって中和されるが, 石膏の溶解度以下のCaやSO4の濃度に維持しておくことが重要である.

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© 日本応用地質学会
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