2005 年 45 巻 6 号 p. 291-303
地下空間開発においては, 構造物の機能維持のために, 岩盤内における地下水挙動の評価が必要となる. とくに深部地質を構成する割れ目系岩盤においては, 内在する多数の亀裂のネットワーク構造でその水理特性を考える試みがなされている. そこでは, 対象とする岩盤全体の水理特性は個々の亀裂の水理特性の集積であり, 広域的な水理挙動を推測するために単一亀裂に対する水理モデルが必要となる. 本研究は, さまざまな表面粗度の亀裂を有する供試体を用いた一面せん断試験を実施し, 応力場あるいは表面粗度をパラメータとした, 広域の透水場を推測するための単一の亀裂の水理モデルの構築を試みる. また, セルオートマトン原理に基づいた格子ガス法によって, 亀裂の表面粗度というミクロ構造を反映した, 巨視的な透水特性を評価するシミュレーション技術を開発する. この手法は, 流体を仮想粒子に置換し, 当該粒子と亀裂の相互作用というミクロなレベルで, マクロな流体の質量と運動量の保存を考えていくものであり, この手法を用いて, 亀裂の表面構造がせん断透水特性を決定する要因を明らかにしていく.