2005 年 46 巻 3 号 p. 153-161
2004年7月13日, 新潟県中越地方を中心とした記録的な集中豪雨により, 五十嵐川や刈谷田川など複数の河川が各所で越流および破堤し, 三条市, 中之島町および見附市などで甚大な被害が発生した. 筆者らは刈谷田川沿いの中之島町中之島および見附市南部の被害状況について調査し, 洪水流の流下様式と地形の関係について検討した. 中之島町中之島は沖積低地上に立地し, 堤防の急激な破堤によって破堤箇所近傍では段波が発生した. 洪水流は主に道路や空き地を通って拡散したこと, 自然堤防の高まりを避けて途中から流路を変更したこと, および寺院に植えられている樹木や今回の破堤で生じた瓦礫の存在により, 洪水流の嵩上げが生じたことなどが明らかになった. 一方, 見附市南部は多くの段丘面で囲まれた谷底平野に位置し, 稚児清水川の破堤によって堤内に流入した洪水流の流路は現堤防と段丘面に規制された. 洪水流は沖積面の狭まる地形的狭窄部に位置していた旧堤防により一時的に塞き止められて嵩上げされ, その後, 旧堤防を破壊して, 稚児清水川から4km下流の, 堤防よりも低い段丘面の狭窄部を直撃したことが明らかとなった.