2006 年 47 巻 2 号 p. 68-76
北海道北部幌延町で掘削された500~700m級の8本のボーリングより採取された岩石コアから, 各深度の間隙水を圧縮法にて採取し, 酸素・水素安定同位体比, 電気伝導度などの地球化学的情報をもとに低透水性堆積岩盤中における地下水の起源・水質の形成機構の解明を試みた. その結果, 本地域の地下水は, “堆積当時に取り込まれた海水・寒冷気候下 (氷期) に地表面から涵養された天水・最終氷期以降に涵養された現在の天水”の3成分をエンドメンバーに持つことがわかった. さらに, この間隙水の3成分の成分分離を行ったところ, 最終氷期終了以降に涵養された天水の浸入深度は最大でも標高-160mにとどまる一方で, 氷期の天水の浸入深度は標高-400mまで達していることが明らかになった. このことは, 氷期の海水準低下に伴う相対的な地下水流動の活発期と, 現在のような間氷期の海進に伴う地下水流動の不活発期の相違を示すものであると考えられる. また, 間隙水の同位体組成および化学特性から考察された天水の浸入深度分布と, 地層の透水係数および水理ポテンシャルの水理試験結果から想定される地下水流動とは整合的であった.