応用地質
Online ISSN : 1884-0973
Print ISSN : 0286-7737
ISSN-L : 0286-7737
滋賀県東部, 姉川流域に分布するせき止め湖堆積物の特徴と14C年代
小嶋 智西尾 洋三徐 勝永澤 智江後藤 紘亮大谷 具幸矢入 憲二
著者情報
ジャーナル フリー

2006 年 47 巻 4 号 p. 196-207

詳細
抄録

滋賀県東部の伊吹山の西麓を流れる姉川沿いには, 葉理・層理が発達した泥層が分布する. この泥層は, 岩相・分布などの特徴や伊吹山西面の崩壊堆積物との位置関係から, 伊吹山の大規模斜面崩壊によって形成されたせき止め湖堆積物と考えられる. この堆積物には新期・古期の2種類があり, 新期せき止め湖堆積物には, 砕屑粒子・珪藻殻・菱鉄鉱微粒子・有機物などからなる薄い葉理をもつ部分がある. この葉理は春にブルーミングを迎える珪藻の殻が濃集した葉理と湖底が還元的となる夏に形成される菱鉄鉱および粘土鉱物の濃集した葉理が繰り返す年縞に, 粗粒砕屑粒子・植物片などの有機物が時折供給されて形成されたものと考えられる. 新期・古期せき止め湖堆積物に含まれる植物遺体の14C年代は, ばらつきが大きいものの, それぞれ約5,000年前, 約3万~4万年前であった. 本研究で得られた14C年代, 葉理をもつ泥層から推定される堆積期間, 既往研究による火山灰の存在や古文書記録などから, 姉川流域にせき止め湖を出現させ, 長い期間存続させるような斜面崩壊が, 伊吹山西面で少なくとも過去に2度発生したことが明らかとなった.

著者関連情報
© 日本応用地質学会
前の記事 次の記事
feedback
Top