2007 年 48 巻 5 号 p. 232-240
岡山県西部の三畳系成羽層群分布域では地すべりが多発している, これらの地すべりは, 地質素因の一つとして脆弱な炭質層の存在が指摘され, 成羽層群地すべりと呼ばれてきた. 一方, 本層群では顕著な褶曲構造を反映して広い範囲で地層が変形していることから, れも地すべりを規制している可能性がある. そこで, 褶曲構造を主体とした地質構造と地すべりブロックの分布, 形態, 移動方向の関係を検討したところ, 地すべりの多くは褶曲した層理面に規制されていることが明らかとなった. これには褶曲翼部の傾斜に支配されて変動するタイプのほかに, 小規模な向斜構造の軸とプランジ方向に支配されて変動するタイプが認められた. 後者の地すべりブロック内部には向斜構造がよく残存していた. これらのことから, 成羽層群地すべりの地質素因として, 炭質層に加えて褶曲構造の存在を挙げることができ, 多数の地すべりは両者の影響のもとで生じているものと考えられる.