2007 年 48 巻 5 号 p. 265-272
災害による環境破壊が, 世界中で幾度となく起こっている. これらの災害としては, 人為災害と自然災害があり, 環境破壊としては, 社会環境の破壊と自然環境の破壊がある. 従来から, 災害からの人的・物的被害の軽減は, 応用地質の大きなテーマの一つであるが, 災害による環境破壊という観点での研究は少ない. ここでは, 著者らは地質に密接に関連した人為災害の一つである鉄穴流しに注目し, 山地部での森林破壊・土壌浸食と平野部での土砂の氾濫や天井川の築堤などの事例研究を行った.
次に, 自然災害では火山噴火や地震・豪雨などによる社会環境や自然環境の破壊があり, ここでは, 2000年三宅島噴火による森林破壊と, 2004年新潟県中越地震での山古志地区の森林被害や天然ダム, 土砂流出による自然環境劣化などについて述べる.
環境破壊の軽減策としては, 災害が発生してから対処することが多く, 問題が多い. 今後, 木の根の強度を入れた斜面安定の評価手法である粘着力合算法を利用すると, 木の根の発育を良好に保つことを通じて, 予防医学のように災害の少ない健全な環境を作っておくことが可能である.