応用地質
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土砂災害地形の発生にかかわる現地形と植生変化の影響
北部北上山地における検討例
太田 岳洋長谷川 淳高見 智之川村 晃寛
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2008 年 49 巻 4 号 p. 204-216

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抄録

硬質の堆積岩がほぼ一様に分布するとみなすことのできる北部北上山地の一地域について, 気象条件がほぼ一定であった1970年~2001年の6時期の空中写真を用いて植生変化と土砂災害地形を判読した. また2000年に航空レーザ測量で得られた数値標高モデル (DEM) を用いて現地形を定量的に計測した. これらの結果から, 流域内における土砂災害地形の発生には, 流域の地形条件と植生の変化の両者が影響することが明らかとなった. 例えば, 局所的な平均傾斜量や高度分散量の流域平均値が大きくなると流域内の単位面積あたりの崩壊箇所数が増加し, また伐採によりコナラ・クリ・落葉広葉樹群落の流域内の分布面積が減少しても崩壊箇所数が増加する. しかし, ほぼ全域が伐採された流域でも平均傾斜量の流域平均が小さいと崩壊は発生せず, また平均傾斜量の流域平均や表面積比が大きい流域では植生にかかわらず崩壊地などの土砂災害地形が増加する. これらのことから, 災害発生を促進するような植生条件と斜面崩壊に影響する地形因子とを適切に設定することにより, それらの値を用いて斜面崩壊などの土砂災害地形が発生・増加する可能性を評価できると推定される.

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