2018 年 27 巻 3 号 p. 345-349
内視鏡下鼻副鼻腔手術の病理診断で非浸潤性副鼻腔真菌症の診断であったが,術後経過観察中に,脳膿瘍形成等の浸潤性副鼻腔真菌症でみられる所見を認め,ボリコナゾールにて加療した症例を経験したので報告する。症例は74歳女性。副鼻腔真菌症による右眼窩先端症候群の診断で内視鏡下鼻副鼻腔手術を施行した。原因真菌はアスペルギルスであったが,真菌菌糸の組織内浸潤を認めず,非浸潤性副鼻腔真菌症の診断であった。手術7か月後に画像所見で右眼窩先端周囲および硬膜に肥厚を認め,脳膿瘍を認めた。浸潤性副鼻腔真菌症に準じてボリコナゾール長期投与を行った。治療開始後9か月で脳膿瘍は軽快した。病理所見では浸潤性副鼻腔真菌症の確定が得られなくても,免疫能が低下している患者において経過・検査所見・画像などより浸潤性副鼻腔真菌症が疑われるときには画像による経過観察や抗真菌剤の長期投与による積極的な加療が必要と考えた。