抄録
症例65歳男性。右眼痛・急性涙囊炎の診断を受けた6か月後に後頸部痛・嚥下困難感が出現,増悪するため救急搬送された。右鼻腔腫瘍を契機とした副鼻腔炎からの波及による椎前・後頸部・脊髄硬膜外膿瘍の診断で緊急入院となった。椎前膿瘍に対して咽頭後壁切開による膿瘍の開放,後頸部・脊髄硬膜外膿瘍に対してCTガイド下ドレナージを行い膿瘍は治癒に至った。鼻腔腫瘍は精査の結果,神経内分泌癌の診断となった。シスプラチン併用陽子線治療を行い完全奏功となり現在無再発経過観察中である。鼻副鼻腔疾患より脊髄硬膜外膿瘍をきたした例は国内外含め報告されていない。各種膿瘍の病態や膿瘍に対する処置・神経内分泌癌の治療について文献的考察を加えて報告する。