園芸学会雑誌
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原著論文(英文)
イチゴ果実中アントシアニン濃度と組成の部位および品種による差異
吉田 裕一田村 啓敏
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2005 年 74 巻 1 号 p. 36-41

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抄録

イチゴ果実の部位によるアントシアニン濃度と組成の差異を日本とヨーロッパの品種について調査した. 全アントシアニン濃度は, いずれの品種においても果皮が最も高く, 皮層や髄は低かった. 品種間の濃度差は果皮より内部の果肉組織のほうが大きく, 80年代以降に公表された日本の主要品種は, ヨーロッパの品種 (‘Elsanta’, ‘Darselect’) や‘宝交早生’と比較して果肉中の濃度が低かった. 痩果以外の組織では, pelargonidin 3-glucoside (PG) の比率が他の色素と比較して著しく高かったが, 10品種すべてにおいて痩果中のシアニジン系およびマロニル化したアントシアニンの比率が果肉部分と比較して著しく高く, 痩果中にはpelargonidin 3-malonylglucoside と cyanidin 3-malonylglucosideがかなり多量に含まれていた. ただし, 果皮中にマロニル化アントシアニンをわずかしか含まない‘愛ベリー’, ‘とよのか’, ‘さちのか’の3品種においては, 痩果中のマロニル化アントシアニンの比率が, 他の品種と比較して低かった. これらの結果に基づき, イチゴ果床組織へのマロニル化アントシアニン蓄積を支配すると考えられる遺伝子Amgの機能と発現について考察した.

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© 2005 園芸学会
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