2006 年 75 巻 5 号 p. 403-409
常緑性ツツジの種間雑種と落葉性ツツジ(キレンゲツツジ)との亜属間交配で得られた雑種個体について,落葉性や非耐暑性などの形質改善を目的として,常緑性ツツジへの戻し交雑を試みた.亜属間交雑で得られた雑種個体の花粉は高い不稔性を示したが,倍加した個体 9027-5 の稔性は回復していた.この 9027-5 に数種類の常緑性ツツジを正逆で戻し交雑したところ,9027-5 を花粉親にした場合にのみ実生が得られた.得られたほとんどすべての実生の葉色は緑色であり,アイソザイム分析によりこれらの雑種性が確認された.また,これら緑色実生の葉緑体 DNA は常緑性ツツジ由来であったことから,これまで常緑性ツツジとキレンゲツツジの交配でアルビノ実生出現の要因であった常緑性ツツジ由来の葉緑体ゲノムとキレンゲツツジ由来の核ゲノム間の不和合性は,BC1 世代においては生じていないことが明らかとなった.