抄録
ナシ‘新高’果実を用いて果肉石細胞発達とパーオキシダーゼ活性に及ぼす塩化カルシウム散布の影響について調査した.15 年生‘新高’樹全体に満開後 20 日目から 10 日間隔で 4 回,塩化カルシウム溶液(0, 0.3, 0.5, 1.0%)を滴り落ちる程度に散布した.収穫果実および葉内のカルシウム含量は 0.5 および 1.0%溶液の散布により増加した.フロログルシノール染色した果肉中石細胞を光学顕微鏡下で観察したところ,0.5%溶液の散布によって明らかにその量が減少した.すなわち,200 μm2 以下の石細胞群の数は増加するものの,200~400 μm2 の中型石細胞群および 400 μm2 以上の大型石細胞群数は有意に減少した.果肉のパーオキシダーゼ活性は,満開後 60 日目に上昇し,その後果実発育にともない下降した.塩化カルシウム無処理果実のパーオキシダーゼ活性は,0.5%溶液散布果実より高く,細胞壁画分の結合型および遊離型パーオキシダーゼ活性も同様に高かった.本調査から,塩化カルシウムの散布によりナシ果実の石細胞数とその大きさが減少することが明らかとなり,結合型および遊離型パーオキシダーゼ活性低下によるリグニン化が進まないことがその要因であることが示唆された.