抄録
セイヨウナシ(Pyrus communis L.)‘ラ・フランス’および‘バラード’へアグロバクテリウム法によりカンキツ由来 FT(CiFT)遺伝子を導入した.得られた形質転換体‘ラ・フランス’8 系統,‘バラード’7 系統の導入遺伝子のコピー数は 1~4 コピーであった.そのうち‘ラ・フランス’7 系統,‘バラード’5 系統が in vitro で早期開花性を示した.また形質転換体の CiFT の発現と in vitro における花芽分化率には非常に高い相関がみられた.形質転換体の花器官は雌ずい,雄ずい,花弁,がくの数などにおいて形態的に野生型と異なっていた.得られた形質転換体のうち 2 番目に導入遺伝子の発現が高い系統 No. 6 の花粉をセイヨウナシ‘バートレット’に交配した結果,7 系統の F1 後代に CiFT 遺伝子が遺伝した.これらの F1 後代のうち 5 系統が播種後 10 か月以内に開花を示した.以上の結果よりカンキツ由来の CiFT 遺伝子をセイヨウナシに導入することで早期開花を誘導し,その早期開花性は後代へ遺伝することが明らかとなった.