Journal of the Japanese Society for Horticultural Science
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原著論文
ムラサキナズナ(Aubrieta × cultorum,アブラナ科)の青紫および赤紫色花品種におけるアシル化アントシアニンとケンフェロール配糖体によるコピグメンテーション
立澤 文見相場 優志森野 端之斎藤 規夫篠田 浩一加藤 一幾土岐 健次郎本多 利雄
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2012 年 81 巻 3 号 p. 275-284

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抄録
ムラサキナズナ(アブラナ科)の青紫色品種‘ロイヤルバイオレット’と赤紫色品種‘ロイヤルレッド’のフラボノイド色素と花色の関係を調査した.青紫および赤紫色の両品種から 3 種類のアシル化したシアニジン 3-サンブビオシド-5-グルコシド(色素(1–3))がアントシアニンとして検出された.特に,1 が両品種で主要成分であった.さらに,アシル化フラボノール配糖体の 4 が‘ロイヤルバイオレット’の花から,5 が‘ロイヤルレッド’の花から単離された.これら 5 種類の色素を化学およびスペクトル分析により同定した.色素 124 および 5 は新規フラボノイド色素であった.それらの構造は,1 がシアニジン 3-O-[2-O-(β-キシロピラノシル)-6-O-(トランス-シナポイル)-β-グルコピラノシド]-5-O-[6-O-(マロニル)-β-グルコピラノシド],21 の脱マロニル体であった.さらに,4 がケンフェロール 3-O-[2-O-(β-グルコピラノシル)-6-O-(トランス-シナポイル)-β-グルコピラノシド]-7-O-[4-O-(β-グルコピラノシル)-6-O-(トランス-シナポイル)-β-グルコピラノシド],そして,54 の脱シナピルセロビオシド体であった.既知色素の 3 はシアニジン 3-O-[2-O-(β-キシロピラノシル)-6-O-(トランス-p-クマロイル)-β-グルコピラノシド]-5-O-[6-O-(マロニル)-β-グルコピラノシド] と同定された.花色は R.H.S. カラーチャートとの比色により‘ロイヤルバイオレット’が Vioret 87A,そして,‘ロイヤルレッド’が Purple 78A であった.生花弁と pH 5.0 のバッファーによる搾汁の可視部吸収スペクトルカーブの測定の結果,‘ロイヤルバイオレット’からは 560 と 604 nm に 2 つの特徴的な吸収極大が見られ,‘ロイヤルレッド’からは 546 nm 付近に 1 つのブロードな吸収極大が見られた.pH 5.0 のバッファーによる花色の再現実験の結果,14 を 1 : 2 に混合した場合に青紫色品種の‘ロイヤルバイオレット’の生花弁で見られた特徴的な 560 と 604 nm の吸収極大を示した.一方,15 の混合,または,1 と一般的なコピグメントとの混合では 547 nm のみの吸収極大を示した.よって,45 よりも 1 との分子間コピグメント効果によるムラサキナズナの花色の青色化に有効であることが分った.
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© 2012 園芸学会
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