Journal of the Japanese Society for Horticultural Science
Online ISSN : 1882-336X
Print ISSN : 1882-3351
ISSN-L : 1882-3351
原著論文
ダイアンサス属花弁中のパラチノース加水分解活性とパラチノースによる開花調節作用との関わり
佐藤 茂宮井 麻結杉山 想豊原 憲子
著者情報
ジャーナル オープンアクセス HTML

2013 年 82 巻 4 号 p. 337-343

詳細
抄録
パラチノース(イソマルツロース)は,近年まで,植物体中では代謝されないスクロースのアナログとみなされてきた.筆者らは,カーネーション花弁から得た粗酵素抽出液に,パラチノース分解活性が存在することをみいだした.カーネーション‘リリアン’由来の粗酵素抽出液を用いて検討した結果,分解活性は,α-1,6-グルコシド結合をもつパラチノースとイソマルトースを分解する α-グルコシダーゼ活性によることがわかった.パラチノースは,カーネーション‘リリアン’と‘ピュアレッド’,‘ライトピンクバーバラ’の開花を促進したが,ヒゲナデシコ‘新緋車’の開花を抑制した.カーネーション花弁由来のパラチノース分解活性は,ヒゲナデシコの活性よりも数倍高かった.これらの結果から,カーネーションではパラチノースはグルコースとフルクトースを供給することにより開花を促進し,他方ヒゲナデシコでは分解されずに蓄積したパラチノースが α-グルコシダーゼ活性などの一般代謝活性を阻害することにより開花を抑制することが推察された.
著者関連情報
© 2013 by Japanese Society for Horticultural Science
前の記事 次の記事
feedback
Top