Journal of the Japanese Society for Horticultural Science
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原著論文
雪冷熱を利用した貯蔵におけるアスパラガス若茎の品質変化
二階堂 華那地子 立前田 智雄鈴木 卓荒木 肇
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2014 年 83 巻 4 号 p. 327-334

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抄録

アスパラガスは収穫後の品質劣化が早く,理想的な貯蔵環境は,気温 0–2°C,相対湿度 95–100%とされている.本試験では,雪室と冷蔵庫に貯蔵したアスパラガス若茎の品質保持性を比較した.グリーンアスパラガス‘Grande’と‘Gijnlim'を雪室と冷蔵庫に 0–20 日間貯蔵し,1)硬度,貯蔵前後の生重変化,表面の色調といった物理・外観品質と 2)Brix,糖含量,アスコルビン酸含量,ルチン含量といった内部品質を調査した.貯蔵期間中,冷蔵庫の気温と相対湿度はそれぞれ 3–6°C,65–85%と大きく変動したが,雪室の気温と相対湿度はそれぞれ 0–1°C,100%と安定していた.‘Grande’の生重は冷蔵庫において大きく減少した.‘Gijnlim’の外観は貯蔵 10 日目までほぼ保たれたが,貯蔵 20 日目には雪室と冷蔵庫の双方で若茎の先端の緩みが観察された.一方,貯蔵 15–20 日目で冷蔵庫に貯蔵した‘Grande’はやや褐変し,基部に委縮が認められたが,先端部の緩みは確認されなかった.ほとんどの内部品質では‘Gijnlim’と‘Grande’の双方で雪室と冷蔵庫間で有意差はみられなかった.ライフサイクルアセスメントでは雪室貯蔵での 20 日当たりの CO2 排出量は冷蔵庫貯蔵の約 50%に減少し,貯蔵期間中では CO2 排出が一切みられなかった.エネルギー利用と品質保持の観点から,アスパラガス若茎の貯蔵において,雪室が冷蔵庫の代替のひとつとなりうることが示された.

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