園芸学会雑誌
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キクの育種に関する研究
(第1報)自家稔実率について
河瀬 晃四郎塚本 洋太郎
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1977 年 46 巻 1 号 p. 101-112

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抄録

1. キクの遺伝, 育種学的研究を進めるための基礎資料を得る目的で, 栽培ギクおよび野生ギクの自家交配を行ない, それらの自家稔実率を調査した.
2. 供試した品種および野生種はすべて自家不和合性を示した. しかし, いずれも完全な不和合性とはいえず, 生理的要因によると思われる自家稔性を示したり, 交配した年により稔実率に差のみられる品種や系統があった. また, 同一品種内でも個々の花序により稔実率に差がみられた.
3. 自殖後代においても, そのほとんどが自家不和合性を示したが,‘交野桜’の自殖第1代 (KB系統) には生理的要因のみならず, 遺伝的要因によると思われるやや高い稔実率 (KB2; 52.32%, KB6; 37.59%) を示す個体がみられた.
4. 自家稔実率の高い個体 (KB系統) について, アポミクシスの有無を調査したが, それらにアポミクシス現象は観察されなかった.
5. ほ場に植えた状態, はちに植えた状態および切花にした状態で自家交配を行なったところ, 多くの品種は, はち植えあるいは地植えで交配した場合に比較的高い稔実率を示し, 切花では全体に稔実率は低かった. しかし, 切花でもほ場植えやはち植えの場合と同等もしくはそれ以上の稔実率を示す品種もあった.
6. KB系統を用いて管状花と舌状花の自家稔実率を調査したところ, 舌状花より管状花の稔実率が高かった.
7. 花粉活性をアセトカーミンによる染色率で調査し, 自家稔実率と比較検討した結果, 高い稔実率の得られた品種‘Aztec’, 小ギク (G) および自殖第1代であるKB2, KB6の花粉染色率は高かった. しかし, その他の品種や系統では両者の間に何んら関係は認められなかった.
8. 高い稔実率を示す個体の得られたKB系統で, ニトロブルーテトラゾリウムによる花粉染色率および人工培地での花粉発芽率を調査し, 稔実率と比較したが, それら花粉活性と稔実率の間に明確な関係をみいだすことはできなかった.

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