園芸学会雑誌
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ウンシュウミカンの芽の休眠と花芽分化の温度条件
井上 宏
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1990 年 58 巻 4 号 p. 919-926

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抄録

ウンシュウミカンのえき芽の休眠と花芽分化の温度条件を観察するため, 鉢植えのカラタチ台1年生ウンシュウミカン (‘興津早生’) を供試して実験を行った.
1. 春枝の伸長が停止し, 緑化が進んだ6月中旬から, 0.5か月毎の全葉摘除により, 春枝上に夏枝の発する状況を露地で観察したところ, 発芽日数は当初の12, 13日から次第に短くなり, 9月中旬までは数日内に発芽した. 平均気温が20°C以下に下降する10月上旬以降は, 露地ではまったく発芽しなかった. 摘葉しない個体では, 7月上旬から8月上旬ごろまで, 夏枝の発生が認められた. しかし, いずれも花蕾は発生しなかった.
2. 露地の供試個体を, 時期別に全ての葉を摘除し, ファイトトロンの25°C室に搬入 (摘葉高温処理) して後の春枝の発芽所要日数を6月中旬から0.5か月毎に観察した. 7月中旬までは発芽に10日以上を要したが, 以後急減し, 9月中旬までは3, 4日で発芽した. その後, 再び長くなって, 10月下旬に最長 (12日) となり, 以後また短くなった. 10月下旬を中心とする発芽の遅延を, ウンシュウミカンのえき芽の休眠現象と推定した.
3. 露地の供試個体を, 6月中旬からファイトトロンの15, 20及び25°C室に搬入し, 0.5か月毎に全葉を摘除して後, 25°C室内において発芽•発蕾状況を観察した. 露地区及び25°C区では7月中旬までは発芽に10日前後を要したが, その後日数が急減し, 7月下旬から8月下旬までは5日以内に発芽した. 一方, 20°C及び15°C室に1.5か月以上おいた個体では, 8月下旬までの処理で10日以上を要し, 休眠移入を伺わせた. また, 15°C区では7月下旬, 20°C区では8月下旬の処理個体から花蕾が発生した. 25°C以上を花芽分化無効温度と考えると, ハウスミカンの着果数確保の目安である1結果母枝当たり2花蕾を発生させ, えき芽の休眠も打破するためには, 25°C以下の積算温度で750°Cを必要とした.
4. 6月中旬から15°C室におく期間を種々変えた無摘葉の個体を, 着葉したまま25°C室に移したものでは, 15°C室においた期間が長いものほど25°C室での発芽所要日数が短くなった. 2.5か月以上15°C室のおいたものでは25°C室搬入後, 20日前後で発芽した. 発蕾は15°C室に2か月以上おいたものから認められ, 15°C室に長くおくほど花蕾数は多くなった.
5. 6月中旬にファイトトロンの15°C室に露地から搬入した個体を, 3.5か月間同室においても発芽•発蕾は見られなかったが, 7月中旬までに全葉を摘除すると処理後30日以内に15°C室内で2~3本の夏枝の発生を見た. 同室に1.5か月以上おいたものでは摘葉しても発芽しなかった. これらの個体を摘葉後も15°C室におき, 9月下旬に一斉に25°C室に搬入したところ, いずれも数日後に新梢が伸長した. 発蕾は7月中旬以後に摘葉した個体にみられ, 15°C室での着葉期間の長いものほど花蕾数が増加した. 一方, 新梢発生数は着葉期間が短いもので多い傾向を示した. 新梢と花蕾の合計数に占める花蕾数の割合は着葉期間が長くなるほど大となった.

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