1990 年 58 巻 4 号 p. 935-943
トウガラシ属のCapsicum annuum 7品種, C. chinense3品種, C. frutescens 2品種, C. baccatum 3品種を供試し, 種間雑種に発現する座止及びウイルス病類似病状 (Virus-like Syndrome, VLS) について検討した.前報(8)で C. chinense ‘No. 3341’ と C. annuumとの種間雑種で座止を発現することを認めたが, ここで供試した C. chinense の他の2品種も‘No. 3341’と同一と思われる座止発現遺伝子を持つことが明らかとなった.
C. frutescens ‘タバスコ’もC. chinense ‘No. 3341’と同一と思われる座止遺伝子を持つことが認められた.
C. annuum とC. chinense 及び C. frutescens とのF1における座止発現には細胞質の関与は認められなかった.
C. chinense び C. baccatum 及び C. frutescens とC. baccatum の種間雑種は, いずれの組合せび C. baccatumを花粉親とした場合にVLSが発現し, 逆交雑では. VLSは発現しなかった. このことからVLSの発現には核内遺伝子とともに, C. chinense あるいはC.
frutescens の細胞質が関与していると認められ, C.chinense と C. frutescens の細胞質には遺伝的に一部共通性があることが示唆された. また, C. annuum ‘ブラック•プリンス’×C. baccatum ‘No. 3985’にVLSが発現し, C. annuum の品種の中には, C. chinenseあるいは C. frutescens の細胞質と遺伝的に一部共通するものの存在が認められた.