わが国各地に栽培されるまたは野生のアサツキの38系統を供試し, 細胞遺伝学的に系統間変異の様相を調査した.
1. 染色体数は, 調査した38系統中, 29系統は二倍体 (2n=16, 16+1B), 9系統は三倍体 (2n=24)であった.
2. C-バンド法による核型分析では, 二倍体17系統の核型は, 識別できた8本のV形染色体全体の分染パターンにより, A, B2種類のタイプに大別できた. Aタイプの核型には系統により一部の染色体について分染像上の変異が認められた. 三倍体は, 識別できた12本のV形染色体について, 6系統中5系統の核型がほぼ同様な分染パターンであった.
3. 花粉母細胞減数分裂は, 調査した二倍体の7系統では正常に進行したが, そのうち2系統では四分子期以降に異常が観察された. 三倍体 (1系統) では第I中期に6.68III+1.32II+1.32Iの平均対合頻度が観察され, その後のステージで分裂の異常が観察された.
4. 花粉稔性は, 二倍体では, 系統により高い(90.1~98.2%, 18系統), やや低い (69.8~85.2%, 4系統) およびかなり低い (7.9~28.0%, 5系統) と異なった. 後者のかなり低い系統 (2系統を調査) では花粉母細胞減数分裂の四分子期以降に異常が観察された. 三倍体5系統の花粉稔性は, 63.2~86.9%の範囲で異なった.
5. 種子稔性は, 二倍体19系統では0~0.54の,三倍体6系統では0~0.05の範囲でそれぞれ異なった.
6. C-バンド核型と, 減数分裂および花粉稔性の観察結果を併せると, Aタイプの核型の12系統中9系統は8対の相同染色体から構成された. 一方, Bタイプの5系統の核型はいずれも異型接合的であり, また, 花粉稔性はかなり低く, 種子稔性はAタイプの系統に比べて低かった.
以上のように, 本研究ではアサツキの細胞遺伝学的な多様性が明らかになり, アサツキの系統を整理, 分類する上で本研究で用いた細胞遺伝学的手法は有用であることが示された.