67 巻 (1998) 5 号 p. 708-714
1984年にウメ'梅郷'を種子親に用い, ニホンスモモ'ソルダム'を受粉して4個の稔性種子を得た.翌年は種して3個体の実生を得た.1986年には開花・結実がみられたのでその後に形態的特性を調査すると共に, 雑種性をPeroxidaseとEsteraseのアイソザイム分析によって確認した.結果は次のように要約される.1. 実生3個体における葉身, 葉の先端部と基部の形状および葉柄の色は, 種子親のウメ'梅郷'に類似した.蜜腺の着生は花粉親の'ソルダム'と実生3個体で明確に認められたが, 種子親の'梅郷'では不明確であった.2. 花の大きさは種子親'梅郷'が花粉親の'ソルダム'に比べて大きく, 実生3個体は両親の中間の大きさを示した.1花芽中の花数は種子親の'梅郷'が1花芽1花に対し, 花粉親の'ソルダム'は複数花(1∿4花)を生ずる.実生3個体もそれぞれ複数花を生じ, 稔性花粉を保持していた.子房上の毛じは種子親の'梅郷'は有毛, 花粉親の'ソルダム'は無毛であるが, 実生3個体はいずれも有毛で, '梅郷'に似ている.3. 果形は種子親の'梅郷'が円形, 花粉親の'ソルダム'は果頂部が僅かに凸型の円形であるが, 実生の2個体は円形, 1個体は倒卵形であった.果肉色は'梅郷'が淡黄色, 'ソルダム'が赤色である.雑種実生は1個体が赤色, 2個体が黄色であった.4. PeroxidaseおよびEsteraseのアイソザイム分析の結果からも, 雑種実生はウメ'梅郷'とニホンスモモ'ソルダム'の種間雑種と確認された.