水文・水資源学会誌
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原著論文
宝川森林理水試験地における積雪水量の高度分布の長期変化
村上 茂樹山野井 克己
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2003 年 16 巻 2 号 p. 131-141

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抄録

群馬県水上町の利根川源流域に位置する宝川森林理水試験地の初沢流域 (118ha, 高度差570m) において, 1939∼1967年, 1983∼1984年, 1996∼2000年に積雪調査が行われ, 積雪水量が測定された. 全層平均積雪密度は高度に依存せず, 日付の関数として表現できた. 森林地帯では積雪水量は高度と正の線形関係にあることが知られている. その増加率を表す係数aの値は, 一冬間の時間経過とともに増加する傾向を示した. また, 係数aの値は1939∼1967年および1983年には, 1月1日を起日として約40∼120日の間に約0.5から約1 m-1へと増加したのに対して, 1984年および1996∼2000年には約70∼120日の間に約1.8から約2.5mm m-1へと増加した. 係数aの大小と少雪年·多雪年との関連性を検討したが, 両者の間に関係は見出せなかった. 係数aが1984年および1996∼2000年に増加した原因として, 第一に気温の変化による流域下流での融雪量の増加, 第二に流域内での森林施業の影響, について検討した. その結果, これらが係数aの増加の原因であるとは考えにくく, 流域上流での降雪の増加が係数aの増加をもたらしていると推察された.

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© 2003 Japan Society of Hydrology and Water Resources
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