17 巻 (2004) 6 号 p. 654-662
世界水アセスメント計画の第1回世界水発展報告書をパイロットケーススタディ(東京大都市圏)を中心に紹介し,第1回世界水発展報告書で明らかになった指標構築における課題を解説する.人口・資産の密集した東京大都市圏は長年の治水対策による洪水氾濫地域の減少と,流況安定に向けた努力によって都市・産業に対する水供給の高い信頼性に支えられてきた.しかし,人口・資産のさらなる集中により洪水被害総額の減少は相殺され,水供給の安定化が新たな水需要を発生させることになった.また,水管理に求められるニーズが多様化・複雑化し,情報の共有や各種リスクとの共存といった,より高度な水管理が必要とされるようになった.このことから東京大都市圏のケーススタディでは特にリスク管理,賢明な水管理,水資源の分配,生態系の保護及び知識ベースの確立に焦点を当て,特にリスク管理や生態系の保護として情報の共有を目指した指標作成の取組みが紹介されている.第1回世界水発展報告では具体的な指標は示されなかったが,空間及び時間スケール,指標の表現方法,一貫性,指標の解釈,データ整備が今後の指標構築の課題として取り上げられた.