水文・水資源学会誌
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原著論文
団粒構造を持つ黒ボク土の溶質分散について
徳本 家康取出 伸夫井上 光弘
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2005 年 18 巻 4 号 p. 401-410

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抄録

団粒構造を持つ黒ボク土を対象に,不飽和および飽和状態の分散係数 D を求め,黒ボク土の分散長 λ の平均間隙流速 v と体積含水率 θ への依存性を調べた.そして団粒構造を持たない砂丘砂の結果と比較することにより,団粒構造の水分および溶質流れに及ぼす影響について考察した.黒ボク土の水分特性曲線は,空気侵入圧h=-15 cmとh=-3,160 cmにおいて,2段階に水分量が大きく減少する階段状の曲線を示した.飽和のθ=0.74 cm3 cm-3に対して団粒の体積含水率は0.5 cm3 cm-3程度,団粒半径は0.1 mm程度と推定された.水分フラックスq =146-3,085 cm d-1の飽和流れにおいては,λv にほぼ比例して増加し,最大2 cm以上になった.これは団粒内外の溶質交換が原因である.また比較的早い溶質交換のため,測定したブレイクスルーカーブ(BTC)に対する移流分散式(CDE)の適合は,水分フラックスにかかわらず良かった.一方,不飽和流れでは,θ の減少に伴い団粒間間隙の流れの影響は小さくなり,λ は減少した.そして団粒内部の溶質分散特性が卓越したθ=0.5-0.6 cm3 cm-3の範囲では,λ=0.2 cm程度で一定となった.不飽和流れにおいてもCDEの適合が良いのは,団粒内部の比較的均質な流れが原因と考えられた.

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© 2005 Japan Society of Hydrology and Water Resources
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