水文・水資源学会誌
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原著論文
関東山地の水道水源林における渓流水の水質
—渓流水の水質形成に及ぼす諸要因の検討—
牧野 育代松永 恒雄梅干野 晁
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2005 年 18 巻 4 号 p. 424-434

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抄録

関東山地の水道水源林内における渓流水を対象として,その水質および水質形成を明らかにすることを目的に,土地被覆が等しく森林地帯である複数の地質において2年間の定点水質観測を行った.その結果,土壌通過水を源とする渓流水の水質はCa2とHCO3-が多く,重炭酸カルシウム(Ca(HCO3)2)型の傾向を示した.次に,主要イオン類による地球化学的検討を行い,それぞれの地質おいて卓越する水質形成機構を推測した.地球化学的に説明のつかなかったNO3-とCl-は,大気降下物,植生及び気温の要因を検討した.Cl-はそのほとんどが大気降下物由来であると推定された.NO3-は,温度による影響,そして,石灰岩が及ぼす間接的な土壌の肥沃化が考えられ,特定の地質による濃度増加効果が示唆された.また,“植生の相違”では,植生の立地条件や林相等の他の要因の影響が大きいことが予測され,これらを考慮した解析が必要と考えられた.

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© 2005 Japan Society of Hydrology and Water Resources
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