水文・水資源学会誌
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原著論文
キャッサバ畑における土壌や植生の不均一な圃場特性
オサマ モハオシ福村 一成石田 朋靖吉野 邦彦
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2005 年 18 巻 5 号 p. 501-509

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抄録

圃場内の土壌や作物キャノピーの空間分布特性は水文過程や溶質移動現象に大きな影響を与える.本論文では,圃場における水移動現象にかかわる土壌と植生の諸変数の空間分布特性を把握することを目的とした.対象地は,タイ国北東部に位置する平坦なキャッサバ畑で,土壌はRhodic Kandiustox に分類され,土性は粘土である.乾燥密度,体積含水率,LAI(葉面積指標),植物高さをメッシュポイントで測定した.体積含水率,乾燥密度についてはメッシュポイントにおいて一つの深さ(0-6 cm)で測定した.圃場での測定値間の相関はLAIと植物高さでr2=0.35となったが,その他は相関が見られなかった.また測定値に空間統計学的手法を適用した結果,対象地の空間的不均一構造は,球形モデルによって最も適切に表され,そのレンジは,乾燥密度,体積含水率,LAI,植物高ともに30 m程度であった.さらに,測定値の空間依存性はLAIが最も強く,植物高さが最低であることがわかった.また,球形モデルで表されたセミバリオグラムを使いクリッギング手法により推定した分布は,クロス・バリデーション手法によって十分に満足できる精度であることが示された.こうして推定された乾燥密度の分布から土壌の水理特性の分布を求めることが示され,圃場における水分移動シミュレーションに有効に利用できる可能性が示唆された.

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© 2005 Japan Society of Hydrology and Water Resources
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